米粉ニュース
2025.11.04
米粉用米の生産拡大を目指す「米粉用米拡大事業施策」の第二弾を実施。 米粉製造のパイオニア・株式会社波里の工場見学会をレポート。
米粉用米の生産拡大を目的に株式会社AGRIKO(アグリコ)が主催する「米粉用米生産拡大事業施策」の第二弾として、国内最大級の米粉製粉量を誇る栃木県「株式会社波里」の本社製粉工場で見学会が実施されました。お米の生産者をはじめとする参加者みなさんに製粉工程を見学してもらうことで、米粉の価値や米粉用米を作ることの意義を改めて認識するとともに、この後に続く米粉製品製造に向け、イメージを膨らませる機会となりました。
見学会には、主催のアグリコのみなさんをはじめ、9月中旬実施の検討会に参加した新潟県・名立で米農家を営むみなさんと、同施策の第三弾で米粉を使用した商品を開発・販売するサンマルクホールディングスのみなさんが集まりました。
実施にあたり、株式会社波里の代表取締役の藤波孝幸さんは「生産者のみなさん、販売先のお客さまと一堂に会することはなかなかありませんので、みなさんに商品化までの流れを見ていただく貴重な機会になれば。生産されているみなさんのご理解を得られると同時に、販売の方も生産者さんのお顔が見られる素敵な取り組みですね」と話します。
株式会社波里は、1947年に栃木県・佐野市で創業した製粉メーカー。米粉の製造販売を中心に、胡麻、ライス、その他雑穀類の加工販売も行っています。上新粉ともち粉を含む米粉に関しては、国内トップクラスの製粉量と販売量を誇る米粉のパイオニアです。同社では長年培った製粉技術をいかし、業務用だけでも37種類もの米粉を製造。徹底した品質管理と米が持つ甘味と風味を最大限に引き出す製粉技術が、長年にわたり食品業界から厚い信頼を得ている理由です。


まずは工場見学前に、社長付参与の山崎さんから一般的な米粉そのもの、そして同社で製造している米粉製品についてのレクチャーがありました。古代から近代以降における粉砕方法の変遷から、米粉の基礎知識と特性、株式会社波里で製造されている業務用米粉と家庭用米粉についても解説します。
「ひとくちに米粉と言ってもさまざまな種類があり、お米に含まれているアミロースの含有率によって用途が分けられています。アミロースの割合が高いとお米の粘りは少なくなるのですが、一般的にお菓子と料理用の米粉は含有率20%未満、パン用なら15~25%未満、麺用は20%以上のお米が使用されます。弊社では大きく分けると、吸水率が高いRシリーズ、吸水率が低いVシリーズの2種を製造しています」と山崎さん。
続いて自社アンケートをもとに、一般消費者の米粉の認知率や消費者が米粉に感じている魅力、米粉で作れるメニューや作るときのポイントについても案内。米粉が一般消費者にどう捉えられているのかと、生産者のみなさんも興味深そうに耳をかたむけます。途中、「料理の目的に応じて種類分けされているんですね」「使い道が多彩なことを知ると、米粉にはまだまだ可能性があると感じる」という声も聞かれました。
「私も米粉でシフォンケーキをよく作りますが、1時間あればできてしまう。ダマになりにくいので振るう必要もなく、ほかの素材ともしっかり混ざるんですよ。製粉技術の向上により、米粉で作ることができるメニューの幅が広がっていることを実感しています。ちなみに米粉と一緒に検索されるキーワードは、年々具体的なメニュー名が増加しているんですよ。用途が増えたことで、小麦粉の代わりというだけではなく、バレンタインシーズンのお菓子づくりをはじめとした利用シーンも広がりました。リピーターも増え、米粉で作る料理自体への関心が高まっているんです」と、自身のエピソードも交えながらレクチャーを終えました。


レクチャー後は、工場見学へ。株式会社波里の米粉は、栃木県産を中心に国内外から厳選した米粉用米を用途に応じて使用。原料となるお米は、何項目もの検査に合格したもののみを使っています。そんなお米が選別されるところから、洗米、浸水、脱水、乾燥、粉砕、包装、最後の金属探知機によるチェック工程までを、同社担当の方による案内のもとで見学しました。おいしい米粉作りにおける各工程の重要性を語りながら、粉砕機をはじめとする機械についての詳細も説明。工場内が機械による轟音に包まれるなか、生産者のみなさんは「工程ごとに、ここまで細かく品質チェックをしているんですか?」「こんな機械は初めて見ました。こうして加工されているんですね」と、興味津々な様子でした。
見学後は、株式会社波里の米粉で作ったパンや大福を試食しながら、感想を語り合う時間に。生産者のみなさんは皆、製粉工程を見るのは初めてだったそうで「チェックの細かさに驚いた。僕らがお米を出荷する前もきちんと確認しますが、加工段階でも異物が入っていないかしっかり確認しているんですね」といった声が多く聞かれました。
さらに「今年は主食用米の価格が上がってますが、この価格は長く続かないと思いますし、そういう意味では安定してお米を使ってもらえる販路の一つとしては、うまくご一緒できたら心強いですね」と、米粉用米の生産について前向きな声も。
サンマルクホールディングスのみなさんも、同社の製造管理体制に感動した様子。「最後の最後までチェックを入れて、ダメなものは出さないというこだわりと品質管理のシステム化がすごい。みなさんとお話して、より製造量を増やせるように私たちも頑張らないと、と思いましたね」と話します。


また「出荷された商品を消費者が開封後に直接口にする商品、例えばお菓子などを作る食品工場のレベルに品質管理をされている印象を受け、より安心してお付き合いできると感じました」とも話します。「我々が安心できてこそお客さまに届けることができますから、この目で見て、その安心感を得られたことは大きい。くわえてRシリーズとVシリーズ、どちらがこれから作る商品に向いているのか、改めて試食してから決めたいですね。ふんわりか、パリッとさせるのか、商品開発にあたっての視野と選択肢も広がりました」と、同施策の第三弾である商品開発に向けての期待を込めます。
アグリコの小林さんは「生産者、製粉業者、加工業者と、消費者の方に商品が届くまでに関わる人たちが同じテーブルを囲んで同じものを食べる機会はなかなかないと思います。なので、それぞれの立場から視点合わせができたこともよかったと思います。時間がオーバーするくらい話し込んでいらっしゃったので、いい機会になったことを実感しましたし、またこの先につながっていけば嬉しいです」と、手応えを語りました。
生産者のみなさんやアグリコのみなさんとじっくり話していた代表取締役の藤波さんは「いろいろと参考になるお話ができました。やはり生産者の方は、出来上がったものが粉になってから何に加工され、最終的にどんな形で販売されるかを気にされますから、工場を見ていただいて、そこで作られた米粉による食品を試食していただけたことは嬉しかったですね」と話します。
第三弾の商品化に向けて、三者がそれぞれの手応えを得、米粉に対する理解が深まった工場見学会。米粉用米の生産拡大を目指す取り組みは、まだまだ続きます。