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原料メーカーならではの視点で語る米粉の魅力とその可能性

2025.01.06

原料メーカーならではの視点で語る米粉の魅力とその可能性

小麦たん白を原料としたグルタミン酸ソーダ「グルタ」の製造販売からスタートし、現在は米粉を使った商品を製造販売し、米粉のポテンシャルも追求する「グリコ栄養食品株式会社」。90年代から米粉事業に携わり、2022年にはこれまでにない米粉製品を販売しました。そんな「グリコ栄養食品株式会社」で米粉に係る、技術営業部 西日本支店の秋山雅治さん、技術営業部 営業戦略室の本田めぐみさん、技術開発センター 物性機能開発グループの松原充さんの3人にインタビュー。米粉の魅力や製品の特徴、そして米粉の可能性について伺いました。

調味料の製造販売でスタートし、
原料素材が持つ可能性を追求

1956年に「江崎グリコ栄食株式会社」として創業した、小麦たん白、デンプン、着色料、米粉などを製造販売する原料メーカー「グリコ栄養食品株式会社」。調味料「グルタ」の製造販売ではじまりました。

「グルタは、小麦たん白を使って作る調味料で、小麦たん白に関しても国内で早くから製造・販売を始めました。米粉に携わるようになったきっかけは、1995年に新潟県によるパンに使える米粉の開発。商品化するためには小麦たん白が必要ということで、声をかけていただいたのが弊社で、業務用の米粉の販売に携わるようになりました」。その後、自社でも米粉の商品を製造販売するようになったと秋山さんは語ります。

米粉の魅力については、「米粉で作ったパンや洋菓子は、日本人に好まれるもちもち食感を付与でき、粒度が細かいことから口どけの良い食感に。また、料理では吸油率の低さから唐揚げや天ぷらなどの揚げ物を、サクサクに仕上げることができるのが米粉の魅力です。欧米の方の約1~5 %の方が小麦アレルギー・セリアック病などで小麦を食べられないと言われており、この問題に対しても米粉は寄与できると考えています。米粉は、みんなで同じものを食べることができる、フード・ダイバーシティの観点からも注目されている食材です。また、カロリーベースで約38%しかない日本の食料自給率を、米粉の消費拡大によってアップさせることができると考えています。我々も、米粉の魅力や使い方などを知ってもらえる機会を増やしたいという思いがあり、食料自給率を意識してほしいと願っています」と本田さんが話してくれました。

多用途な米粉シリーズ

現在、グリコ栄養食品株式会社が製造販売している米粉は、新潟県産米で作った「こめの香(こめのか)」シリーズです。

ひとつめは米粉100%でできている「こめの香(米粉)」。米粉パンだけでなく、洋菓子や料理にもご使用でき、洋菓子では、もちもちとしながらも口どけが良い食感になるのが特徴です。もうひとつが、「こめの香(グルテンフリー)」。グルテンが配合されていないもののよく膨らみ、米粉ならではのもちもち感とほのかな甘みが楽しめます。小麦パンのふんわり感と米粉パンのもちもち感の両方が感じられるのが「こめの香(グルテン配合)」です。

「こめの香(グルテンフリー)」の発売について、秋山さんが語ってくれました。「パナソニック社からホームベーカリーで使用する米粉パンミックス粉を求められたことがきっかけです。新潟製粉などの協力もあってこめの香(グルテンフリー)を開発しました。当時は、小麦アレルゲンに対応している小麦不使用食品は少なく、アレルゲン管理に関する技術の入手が不可能でした。そこで、オリジナルのアレルゲン管理方法を確立しました。ここに時間がかかりましたが、発売当初よりきっちりと検査を行い、アレルゲン事故は一度も起こしておりません」。


そんな「こめの香」の使い方のおすすめはというと、米粉パン以外にも使いたいという声が多く寄せられ、『クックパッド』や『レシピサイトNadia』にてレシピを公開しています」と秋山さん。

本田さんは、「2024年に大阪で行われた『食育推進全国大会』に参加した際、たこ焼きを提供しました。『こめの香(グルテンフリー)』を使用し、通常のたこ焼きよりももっちりした仕上がりになり、すごく好評でした。米粉は小麦粉の代わりに使えるので、みんなで一緒のものが食べられるようにするための、一つの選択肢になると思います。まだ小麦粉が主体の粉もんも、米粉で作れるっていうのも良いですよね」と話してくれました。

新たな米粉の使い方と価値を実現したアルファ化米粉

2022年に「アルファ化米粉 こめとろ🄬」が販売されました。「米がとろっとするので、“こめとろ”と名付けられました。うるち米を洗米してから特殊な機械でアルファ化処理し、その後粉末にした製品で、見た目は普通の米粉ですが、異なる性質を持っています。ひとつが増粘効果です。米粉は水と混合して温めるとのり状に固まっていきますが、『こめとろ』は水に混ぜるだけで粘度が出てきます。例えば、米粉パンを作るときに生地がまとまりやすくなり、作業効率が上がります。また、食感改良の効果があることも特徴です。例えば、米粉を使ったパンは硬くなってしまうことが多いですが、口溶けよくふんわりと仕上げることができます。また、小麦粉に加えて使えば、もちっとした食感を付与することも可能です。この効果を気に入って、パンや洋菓子に導入してもらうことも多いです。ほかにも様々な使い方ができ、例えば米粉を使った麺はグルテンがないので繋がりが悪いですが、『こめとろ』を使うことで繋ぎ合わせることができます。また、タレやソースのとろみ付用途としても利用できます」とは松原さん。「こめとろ」独自の増粘効果、食感改良効果によって、多彩な使用法があると教えてくれました。

そんな松原さんが特におすすめする使い方を伺うと「小麦粉のベーグルに『こめとろ』を5%ほど入れることです。ベーグルの独特の食感を出すために欠かせない工程のケトリング(発酵後の生地をゆでる工程)をしなくても、ベーグルらしい食感を出すことができます」とのこと。


秋山さんは、「こめとろ」が誕生したきっかけや苦労について話してくれました。「『こめとろ』の企画から、製造をお願いする委託工場探しなどは私が担当しました。製造方法が確立されていなかったため、新規製法の実験と検証作業、製造設備の検証作業、製造委託企業への技術指導など苦労の連続でした。結果、コロナ禍もあり販売までに5年ほどかかってしまったのですが、現在はヒット商品となっています。『こめとろ』の企画以前から米粉の担当をしており、そんな中、お客様から『こめとろ』のような特徴を持った製品がないのかと求められたことより、それがアイデアのヒントになりました」。

ちなみに「こめとろ」は、水に溶けるという特徴を活かして、離乳食や嚥下食などへの品質改良にも活用できるとのこと。アイデア次第でさまざまな食品に使用することができる「こめとろ」。今後の展開や新たな可能性にも注目したい製品です。また、「こめとろ」はクリーンラベル表示製品。クリーンラベルに明確な定義はないものの、製品に使用する原材料は少ない方がよいという考えのもと、食品添加物は使用せず、各国で馴染みのある原料を使用するなど、消費者にとってシンプルで分かりやすいラベルを表示できることと考えられています。クリーンラベル製品は、欧米を中心に世界中に広がっており、日本でも定着しつつあるもの。今後は、より一層クリーンラベルを可能とする原料が求められていくと予想されています。


大阪・関西万博をはじめ、未来の食の可能性を探る米粉

2025年に開催される大阪・関西万博。民間パビリオンで参加する大阪外食産業協会にも、米粉を用いてグリコ栄養食品株式会社が協力しています。

「米粉をテーマに入れたいというお話を伺い、弊社の米粉の提供やアイデアの面で協力しました。万博では、パビリオン1カ所に対して、1日1万2、3千人が来場すると言われています。そうなった時に、すぐに作れる回転率がいいものということで、米粉入り冷麺が採用されました。」と秋山さん。

最後に、米粉商品を活用したいと考えている企業や飲食店の方々へメッセージを伺いました。「米粉の使い方が分からないので使用していないというお声をお聞きしますが、弊社は原料メーカーとしてお客様の課題を一緒に考えたり、『こういうものを作りたい』という相談にのったり、米粉の使用方法に対してレシピなどをお伝えすることが可能です。これを機会に一度、米粉を御社の商品に活用してみませんか」(本田さん)。

まだまだ、様々な食の可能性を感じさせてくれる米粉。「こめの香」や「こめとろ」を使用することで、よりオリジナリティのある米粉グルメが誕生する、期待を感じるインタビューとなりました。


グリコ栄養食品株式会社
https://www.glico.com/nutrition/