米粉ニュース
2024.08.08
約70社が大集結。米粉の未来を考える「米粉カンファレンス2024」を開催
米・米粉消費拡大推進プロジェクトによる「米粉カンファレンス2024『米粉ブームの再来、次の一手は?』」が2024年7月17日に開催されました。集まったのは、米粉に関わる企業や研究機関、料理家など約130名。米粉に関する旬のテーマを深掘りし、社会や企業における課題を取り上げました。
米粉の課題と未来を見据える
カンファレンスを実施しました
まず初めに、農林水産省の葛原祐介米麦流通加工対策室長がプロジェクトへの想いを語りました。「かつては“使いづらい”と言われていた米粉ですが、製粉機、食品加工技術、調理レシピなど、さまざまな改善がさまざまな方の努力でなされてきたおかげで、使いやすく用途も広がってきました。これからは、米粉のそれにまつわる技術も含めて食文化として根付いていければと考えています。そして、今回参加している皆さんは、そんな新しい食文化を作る同志です。この機会に交流してもらえたらと思います」。
続いて、今回のカンファレンスの運営を行う、株式会社cottaの黒須綾希子代表が登壇。「130名の方々にご来場いただけ、皆さんの米粉への関心が高いことに感動しています。弊社は、お菓子とパンに関するに国内最大級のEコマースで、お菓子やパンのお店へ材料、道具、情報を届けています。最近、特に検索ボリュームが大きいのが米粉です。このタイミングで、米粉で作ってみたけどうまくできない、おいしくないとならないように、正しい情報を伝えていかないといけないと考えています」と話してくれました。
メーカーだからこそ感じる課題
米粉製粉企業のトークセッション
米粉製粉企業セッションに登壇したのは、栃木県で米粉の生産や米麺の製造、和のスイーツ作りなどを行う株式会社波里の藤波孝幸さん。「“使い方が分からない”というのが米粉の課題。一方で、米粉は使い分ける必要があり、それを伝えていく必要性もあります。私のおすすめは、作りやすくなるだし巻き玉子ともっちりとした食感になるカヌレ。米粉にはまだまだ、ポテンシャルがあると思っています」。
地域の穀物を中心に小麦粉、蕎麦粉、米粉などの製粉企業、熊本製粉株式会社の林いずみさんは、「米粉の課題は、作りにくい、おいしくないと誤解されていること。米粉を使ってもおいしい、特徴のあるものが作れるので、小麦粉とは異なる特性をアピールし、用途に合わせて使うことの大切さを伝えたいですね」と語りました。
トークセッションでは、米粉ごとに用途を伝えるにはどうしたらいいのかが議題に。「現在米粉の用途別基準として、アミロースに着目した製菓・料理用、パン、麺の分類がありますが、いろいろな使い方を想定しながらユーザーに役立つ商品情報の示し方は考えていかないといけないと思っています」と葛原さん。モデレーターを務めたcotta齋藤貴生さんが、「米粉の喫食体験は、パンが70%、お菓子が30%というデータがあります。おすすめのメニューはありますか」と伺うと、「揚げ物は相性が良いと思います。また、パンでもメロンパンのクッキー生地にも相性よく使うことができます。米粉はグルテンを含まないため、小麦粉と比較すると保水性に乏しく、老化が早いという特性があります。一方で、この特性はメニューによってはメリットと捉えることができます。代表的なメニューとして、揚げ物は薄衣で低吸油に仕上がり、食感も長持ちします。メロンパンのクッキー生地への活用も同様です」と藤波さんが答えました。
グルテンフリーについては、確立した定義はない中で「米粉使用とグルテンフリーを混合して表示すると、本当にグルテンフリーが必要な人に重大な誤解を与えるので、グルテンフリーとは言わずに小麦不使用としているケースも多い」(葛原さん)。他の訴求ポイントとして、林さんは「健康面で考えると、機能性がキーワードに。玄米の米粉で食物繊維をアピールするのも良さそう」と話しました。
米粉の海外に展開について話が及ぶと、「グルテンフリー専門でも米粉を使っていない店が多い、ヨーロッパに特に力を入れています。米粉が浸透していないようです」と藤波さん。林さんは「海外展開では、やはりグルテンフリーがカギに。海外は米粉以外にもグルテンフリーの穀物粉が多様にあるので、それを踏まえていかないと」と語ります。葛原さんは、日本の独自性に注目。「日本ならではの米粉料理、使い方で海外へ発信し、その味を気に入ってもらえれば日本産が使ってもらえる。中でも麺類は、まだまだ余地がある世界だと期待しています」。
アカデミアトークセッションでは、
米粉の品種による違いを解説
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構の荒木悦子さんが参加しました。「お米を米粉にしたときの損傷でんぷんの研究をしています。でんぷんの損傷が少ない方が膨らみは良いのですが、そんな特性を持った品種の開発、普及拡大の活動も行っています」(荒木さん)。また、品種の特徴やそれぞれに合う使い方などについてもレクチャー。海外輸出については、「米粉の製品を海外へ輸出する取り組みも行っており、フランスで『笑みたわわ』を使ったパンの嗜好性調査や、展示会に参加したことも。結果、米粉フレークの輸出が決まり、現在も継続されています」と語ります。
海外での米粉需要が高まった時の問題点について、齋藤さんは「米粉の生産の需要が高まっていますが、さらに海外でも需要が生まれると、それに対応が可能なのでしょうか?」と疑問を投げかけます。「今のところ、まだ生産者さんの余力はある状況です」(荒木さん)。「生産拡大するべきだという声も受けますが、まずはきちんと需要を作るということが大切。農水省としても生産、製造、商品開発への支援をしていますが米粉や米粉の商品が売れるものになるよう良い品種を作ると、これに対応して適切な米粉用米の生産が進み、それによって米粉市場がさらに広がる、そんな良いサイクルができれば」(葛原さん)。
また、健康というキーワードについて荒木さんは、「健康に着目し訴求するとなると、玄米粉になると思います。微量栄養素が豊富なので、アピールできるものはたくさんあります」。葛原さんは「タンパク質の接種源として、お米は肉や魚の次に多く食べられている食品です。玄米は抗酸化性の物質があるので、それを求めて食べる人も多いですよね。しかし、炊くのが大変、食べにくいなどの声もあるので、玄米粉にすればそれが解決できそう」と考えを話してくれました。
米粉の商品を売るにはどうする?
料理研究トークセッションにヒントが
こちらで登壇した高橋ヒロさんは、米粉の専門家として活躍する料理家、フードコーディネーター。これまでに8冊のレシピ本を手がけるほか、レッスンや講演、オンラインサロンを通して米粉の魅力を発信しています。そんな高橋さんは、子どもの小麦粉アレルギーをきっかけに米粉の活用に興味を持ち始めたといいます。「10年ほど前の当時は、米粉を使うとおいしく作れないことも多く、どうにかおいしく作りたいと火がつきました」。「これまでも何度か米粉のブームがありましたよね。昨今の米粉ブームはブームで終わらず、ジャンルが確立されるはず」とは黒須さん。「今は知識がなくてもおいしく作れるレシピや商品がありますよね。また、手に入れやすくなり、米粉を使うことが日常化しています」(高橋さん)。
米粉が定着しつつある今、ビジネスチャンスを感じているという黒須さん。「今までは、深刻な理由や強い想いがあって米粉を使う人が多かったですが、3年くらい前からは変わってきています。米粉の何かを食べたときにおいしいと思って興味を持ったり、気軽にグルテンフリーを取り入れている人が多い」。「実際、グルテンフリーと掲げるより『米粉でおいしく』というキーワードの方が、たくさんの人から興味を持ってもらえます。また、米粉の特性を生かすことで“簡単おいしい”が叶えられるので、簡単に手作りを楽しみたい層も取り込めるのでは」と高橋さんは語ります。黒須さんも「米粉がきっかけでお菓子、パン作りをする人が多くなっていると感じています」と実感していました。
最後に米粉を使った商品開発にも携わる高橋さんから、アドバイスを伺いました。「ブランディングをちゃんとすることが大切。ターゲットと出口を作ることで、いいものが売れようになると思います」(高橋さん)。「消費者が自分で調べられる時代ですもんね。具体的におすすめの商品はありますか?」と黒須さんが伺うと、「シフォンケーキは小麦粉で作るとパサつくことがありますが、米粉ならそれがなく、日持ちもします。余ってもラスクにすることができます。また、もちもちしながら、トースターで焼くとカリッとするバゲットもおすすめ。飲食店で提供しやすく、流通もさせやすいですよ」。
3部にわたるトークセッションによって浮き彫りとなった米粉の課題。しかし、米粉が日常的に口にできる当たり前の食材になりつつある、兆しも見えてきました。
米粉メーカーの参加者からは「食品メーカーさんのやる気、将来性などを感じることができた」「輸出に関して是非とも当社も協業し広めていきたい」といった声があがり、食品メーカーの参加者からは、「今後のトレンドを聞けてよかった」「米粉用の品種がこんなにあるのかと知れて、今後の開発の参考にしたいと思います」と有意義に感じられたようです。皆さん、その後の交流会でも意見を交換し、課題解決や商品開発のアイデアを吸収したよう。協業やコラボレーションが生まれ、より米粉が発展する。そんな期待に満ちたカンファレンスとなりました。