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米麺を製造する企業が集結!「米麺ゼミ」の活動としてセミナーが開催されました

2024.10.16

米麺を製造する企業が集結!「米麺ゼミ」の活動としてセミナーが開催されました

より米粉の特徴や魅力を研究する取り組み“米コ塾”。お好み焼きやたこ焼きといったコナモンに続いて、2024年9月17日(火)に「米麺ゼミ」の活動としてセミナーが開催されました。セミナーの会場となったのは、大阪を拠点に国内外で活躍する調理師やパティシエを輩出する辻調理師専門学校で、共催という形で米麺の魅力や可能性を発信しました。

天下の台所・大阪で
未来の米麺の形を探るセミナーを実施

冒頭、米・米粉消費拡大推進プロジェクトを担当する、農林水産省農産局 穀物課 課長補佐 齊官英雄さんが登壇し、米麺に注目した理由を語りました。 「みんなが好きなメニューで、外国人も好む日本食を考えた時に、その中でも『おいしい・手頃な値段・すぐに食べられる』のは、麺料理なのではないかと考えました。日本でつくられる国産の食材で、日本の農業のためにもなる、そんな食ジャンルに米麺がなるのではと思い、天下の台所・大阪で研究しようと本日のセミナーを企画しました。大阪に米麺のご当地グルメを作りたいと考えています」。

続いて、米麺ゼミを共催した辻調理師専門学校 食環境マネジメント概論 講師 尾藤環さんが登壇。「米の先物取引が復活するということで盛り上がっていますが、江戸時代、大阪に先物取引機能があり、米の流通拠点でした。流通拠点はイノベーションが生まれやすく食文化が多様になっていきます。江戸時代、それによって生まれたのが、現在も名物の“おこし”です」と、大阪と米の関係性について語りました。また、多様性時代についても言及し、「ハラールやビーガンなど多様な方を迎えるとなった時に、同じテーブルを囲むことができるメニューがあることが大切になります。とはいえ、日本の食文化を知ってほしい、となった時に米麺が有用になってくるのではないでしょうか」と話しました。


「長い年月を見てみると米の消費が減っていて、どうやって日本の米を守っていくか、水田を守っていくかと考えていくと、さまざまな形でお米を食していかないといけないと考えています」と齊官さん。

米粉の魅力について、「今回は麺の企画ですが、それ以外にも使えて汎用性があります。小麦粉の代わりではなく、米粉の良さを引き出してさまざまなジャンルで使ってほしいですね」とは齊官さん。尾藤さんも「小麦粉と香りが違うので別物として考えた方がいいと思います」と同意見。しかし、「(小麦粉が食べられない人も含め)ひとつのテーブルを囲むという観点での使い方も必要になると思っています」と語り、「大阪はイノベーションの街です。今日は、『こんな麺が良い』『こんな麺を作って欲しい』など、さまざまな意見をフィードバックし、米麺というテーマで面白くアプローチしていく機会になれば」と今回のセミナーへの思いを語りました。

米麺メニュー開発のヒントに
米麺メーカーが提供事例をご紹介

米麺を製造販売する4社にも集まっていただき、各社のセッションも実施。それぞれの米麺の特徴や想い、提供事例について話していただきました。

株式会社おこめん工房の代表取締役・井掛雅祥さんは、会社設立のきっかけを「広島県大和町の人口は20年で40%も減っています。このままでは、生まれ育った地域がなくなってしまう、そう考えたときに雇用を作る必要性に注目。基幹産業である稲作農業で食べていけない現状が人口減の1つの原因と考えたので、日本ならではの米麺文化を作り、稲作農業で生活できる仕組みを作りたいと考えスタートしました」と話します。当初は小麦粉などを加えて作っていましたが、2007年に米粉に特化した麺開発に着手し現在の米麺「おこめん」が形成されました。 こちらの米麺「おこめん」は、ツルツルもちもちとした新しい食感が持ち味。また、茹で時間が1分半と短いのも特色です。「小麦の麺と比較されない、お米だから作れる麺で、日本に新しい米麺文化を作りたいと思い『おこめん』と名付けました。広島の学校給食としても提供されるようになりましたが、どう食べるかという提案があまりできていないのが現状です。本日お越しの皆様にも是非、おこめんならではの食べ方を一緒に考えてくれたら嬉しいです」と呼びかけました。


次に、製麺機のメーカーである日本麺機の取締役で、グループ会社のニチメンTradingsの代表も務める基井優希也さんが登壇。「ニチメンTradingsでは、米粉のパスタを製造販売しており、無添加にこだわっています。米粉は奥が深く、無添加では小麦粉のように生地がつながらず開発には2、3年かかりました。無添加の米粉パスタに向いているお米と出会うことができたことと、メーカーなのでさまざまな製麺機で試作が行えたことで完成しました」と話します。

まだ、米麺を食べたことがない人も多くいることにも触れ、「お米の麺やグルテンフリーの麺を飲食店が消費者に届けてくれることで、その存在が活発に周知されるようになると思います。製麺機メーカーなので、独自の米麺開発に協力可能。現在、米粉麺専用の製麺機を開発中で、さまざまなお米でラーメンやパスタが作れるようになる予定です」とのこと。より米麺が盛り上がりそうな開発が行われているとあって、期待が高まります。


株式会社高谷からは代表の高谷直樹さんがトークセッションを行いました。「実家が米農家をやっており、そのお米を『清水っ粉』という米粉にしています。(兼業で)以前からベーカリーもやっていたので、そちらで米粉のパンの製造販売も行っています」。

高谷さんの地元・高槻市を含む北大阪エリアは兼業農家が多く、農業の衰退が問題視されている地域でもあります。そんな現状を変えたいとの思いが、高谷さんが米粉に注目したきっかけだと言います。「専業農家のように大規模なことができない兼業農家が多い地域のため、地域のブランドの米粉を作ろうと考えました。お菓子屋さんに卸してお菓子にしてもらったり、自分の店でパンにしたり、またパンケーキやお好み焼きなどのミックス粉にもしています。その後、良い製麺機と出会い、米麺を作ることができました」と高谷さん。高槻市産米100%の米粉で作った麺は、「からだが喜ぶ麺」と名付けられ、高槻市のふるさと納税返礼品にも選ばれています。


株式会社フィット&リカバリーの代表・鶴留洋一さんは、その場で米麺作りを実践。米粉(玄米粉)に水を加えて団子状にした後、押し出し式の製麺機で麺を作り、茹で上げました。

「通常の小麦粉の1/5~1/6くらいの細かさに製粉した米粉(玄米粉)を自社で作っており、かなり細かい粒度に粉砕している事とマイナス20℃の温度下にて製粉し、粉砕時に熱が加わらない為、アルファ化せず水の表面張力で米粉同士がくっつき麺になるのが特徴です。また、熱が発生しないということは、熱に弱いビタミンが壊れない利点があります」と鶴留さん。また、どんな品種のお米でも、古米でも麺やパンなどを作ることができると言います。

そんな、米粉はさまざまな企業のお菓子などで使われているほか、自社で乾麺、冷凍の半生麺を販売しているそう。「弊社の米麺は小麦粉で麺を作るときに比べて1.5倍ほど水を使うので、カロリーオフに繋がります。麺だけでなくお好み焼きとして使った場合も同様です」と魅力をアピールしました。

冷やした米麺と植物性出汁が好相性
ビーガン&グルテンフリーの冷麺が登場

実際に米麺をメニューに取り入れ提供している、飲食店目線のセッションもありました。登壇したのは、株式会社龍旗信の代表取締役である松原龍司さん。大阪府堺市発祥の塩ラーメン専門店「龍旗信」を展開しています

「米麺で塩味の冷麺を作り、お店で提供しています。大阪で行われた食のイベントで、ビーガン&グルテンフリーに振り切ったラーメンを提供したいと考え、米麺を考案したのがスタート。この時はまだ完璧とは言えませんでしたが、グルテンフリーというだけでニーズがあるなと感じました」と松原さん。その後、改良を重ね、現在の冷麺を完成させたと言います。「米粉に関しては素人だったので、何度もミスをして…。今でも不意を突かれてミスをすることがあります。その甲斐あって、現在では通常の麺と『何が違うの?』と言われるくらいのクオリティになりました」と話します。現在は、米麺をメインに製造する工場を設け、米粉の中華麺を製造。龍旗信のほか、高野山のお店の精進ヌードルとしても使用されているのだそう。

「米麺を作ったばかりの時は、スープをビーガン対応にしようと思うとインスタント以上、お店のラーメン以下の味になってしまい、商品化できなかったのですが、米麺を冷やしてみたらおいしくて。それに、不二製油さんの植物性の素材を使用して製造した出汁がバチっと合ったんです」と松原さんは語ってくれました。


そんな、龍旗信でも使用している植物性の出汁を製造する不二製油株式会社 風味基材事業部より部長の齋藤努さんも登場しました。「弊社は研究開発に力を入れており、特に油脂とタンパクにこだわりを持っています。ひとつのテーブルを多様な価値観を持った人が囲むようになるには、ビーガン以外の人が食べてもおいしいものである必要がありますが、植物性の出汁“MIRA-Dashi®(ミラダシ)”は、環境や健康への配慮からではなく本能でおいしいと思って食べてもらえるように開発しました」と齋藤さん。ミラダシは、ブイヨン、フォン、カツオ風魚介、白湯として使える4種があり、さまざまな料理ジャンルで使えます。

「米粉とは、味の相性はもちろん、多様なメニュー展開をしていく点でも期待ができるのがミラダシです」と、齋藤さん。食の多様性への対応が外食業界のグローバルスタンダードになるこれからに、ぜひ注目したいプラントベースの食材です。


今回のセミナーでは、米麺を使ったメニュー開発・提供に関心をお持ちの飲食店様、メディアの皆さまをご招待。セッションの後には、試食会を行いました。今回用意されたのは、7種の米麺と龍旗信の塩冷麺、不二精油のミラダシを用いた植物性のめんつゆや豚骨風スープなど。それぞれの味わいはもちろん、見た目や食感などを比べ、参加者の皆さんは興味深く感じた様子でした。


飲食店を複数運営する会社の参加者からは「米粉に向き合ってこられた方々の直接の話を聞ける文字通り「米粉・米麺塾」。大変勉強になりました」といった声があがり、食品メーカーの参加者からは、「麺メーカー、機械メーカー、粉、外食とそれぞれの立場の人から多角的に話が聞けて、また、それぞれの試食ができたのも良かった」との感想が。皆さん、改めて米麺について理解を深めることができたよう。飲食店や料理人などのプロの力によって、おいしい米麺メニューが誕生し、日本に新たな米麺文化が根付くきっかけにつながるセミナーとなりました。