米粉ゼミ
2024.04.16
米粉の可能性を追求する「コナモンのプロがガチ集結‼︎実食!米コ塾~お好み焼篇~」
より米粉の特徴や魅力を探るべく、農林水産省、各業界の有識者、事業者といった関係者が集まり、研究する取り組み“米コ塾”がスタート。キックオフとなるゼミは、コナモン料理で、その代表格である「お好み焼」。米粉を使用したお好み焼の試食や議論を通し、お好み焼の生地における米粉の比率によって変化する特徴について研究しました。こちらの記事では、その様子をご紹介します。
コナモンの代表格「お好み焼」に米粉。
どんな相乗効果が生まれるのか!?
司会進行を務めるアナウンサー・永尾亜子さんのタイトルコールで始まった、「コナモンのプロがガチ集結‼︎実食!米コ塾!~お好み焼篇~」。この企画に賛同している一般社団法人日本コナモン協会会長を務める熊谷真菜さん、顧問の八木宏一郎さんを筆頭に、お好み焼にまつわる様々な企業・飲食店が、オタフクソースのテストキッチンに一同に介しました。
まずは「米粉の秘めたる真の魅力を発掘すべく、米粉と相性の良い小麦粉を使った料理“コナモン”との掛け合わせをテーマに、米粉と小麦粉の比率によって変化する特徴を探し出します」と永尾さんが企画内容を説明。
「見た目(断面など)」「香り(食欲をそそる香りか)」「食感(くちどけなど)」「味(先味、中味、後味)」「バランス」の5項目が評価基準。今回お好み焼を題材とした理由については、「お好み焼は、コナモンの中でもフライパンで作れる、家で作りやすいメニューです。どんな結果になるか分かりませんが、自分好みの黄金比を見つけて、自宅で楽しんでほしいと思います」と熊谷さんが話してくれました。
続いて、今回参加するメンバーが登場し、意気込みを語ってくれました。まず、「米・米粉消費拡大推進プロジェクト」を代表し、農林水産省の齊官英雄さんは「今日はお好み焼に米粉を入れるということで、どんな相乗効果が生まれるのか期待しています」とコメント。同じく農林水産省の吉野明子さんは「食事シーンにあったコナモンの配合比率を見つけたいです」と語りました。
企業からは、「ソースによく合う小麦粉、米粉の割合が研究できると聞いて来ました」とオタフクソースの新井哲也さん、同社の長谷川寛美さんは「おいしいお好み焼を焼いていきたいと思います!」と気合い十分。また、「マヨネーズは米粉、小麦粉どちらとも合うと思うので、新しい魅力を見つけたいです」(キユーピーの中村友美さん)、「米粉の魅力をたくさん伝えられたらと思います」(熊本製粉の前原永さん)、「普段から小麦粉のお好み焼はたくさん食べていますが、米粉を配合することでどう変化するのか…。楽しみにしています」(日清製粉ウェルナの桑原明香さん)と皆さん、米粉を使うお好み焼を楽しみにしている様子です。
「創業から73年、ほとんどメニューは変えていませんが、米粉を配合してよりおいしくなるのなら使っていきたいですね」とは、都内の人気お好み焼き店「人形町 松浪」を切り盛りする木村玉枝さん。最後に八木さんが「毎日のように粉のことを考えてきた人たちが集まってくれました。いろんな配合が楽しめたらと思います」と話してくれました。
いよいよ3つの比率を実食!
米粉効果で食材の味わいが感じられる!?
今回お好み焼で試される米粉と小麦粉の比率は、1つ目が米粉3:小麦粉7、2つ目が米粉5:小麦粉5、3つ目が米粉8:小麦粉2。前原さんは「米粉はグルテンがないので、とろっとしそう」と、新井さんは「半々くらいがどちらの特徴も感じられて良さそう」と予想しました。
その後は、関東と関西、大阪と広島でのお好み焼カルチャーの違いについてトークが展開。「お好み焼にご飯はアリ派?」「食べるときは箸?コテ?」などの話題で盛り上がりました。
続いては、オタフクソースの新井さんと長谷川さんによる調理がスタート! おふたりは、オタフクソース独自の資格である「お好み焼士」を取得しているそうで、文字通りお好み焼のエキスパート。お好み焼で使用する食材についても丁寧に解説し、調理をしながら作る時のコツについても教えてくれました。
さっそく実食がスタート。まず提供されたお好み焼は、米粉と小麦粉の割合がクイズに。回答者の八木さんは「米粉の話と思わせて、小麦粉100%!小麦粉の良さがちゃんと出ている、いつも食べている普通のお好み焼です」と大正解。この100%小麦粉のお好み焼を食べてみて、前原さんは「米粉では粘りが出ないので、入れることでやわらかい食感になるのでは」と予想します。長谷川さんは「米粉を使っても、焼いているときに違いを感じないので、味がどう変わるか…」と考えている様子。また、齊官さんは「中がふわっと、外側はカリッとクリスピーになっているのでは?」推測していました。
そしていよいよ、米粉3:小麦粉7のお好み焼が提供されると、まずお皿を持ち上げて見た目をチェックしたり顔を近づけて香りを確かめる参加者の皆さん。「やわらかくなったし、ソースとの相性が良くなったように感じます。また、キャベツの甘みが感じやすくなりましたね」(前原さん)、「キャベツ由来なのか、甘みが感じられます」(中村さん)、「粉っぽさを感じないですね。野菜などのその他の味わいがよく感じられる」(木村さん)といったように、粉以外の食材の味わいが強く感じられるようになったという意見が多く上がりました。また、八木さんは「なめらかな感じがしますね。30%でこうなると、この先、どうなっちゃうんだろう?米粉が入れば入るほど、崩れやすくなりそう」と語り、新井さんは「キャベツが細かい切り方になるとべちょっとしていまいそうですね」と分析しました。
フリップにポイントを書き込み、コメントをうかがうと、桑原さんは、「思ったよりも甘みもあり、食感が良かったです」とのこと。長谷川さんは「食感が、小麦粉100%のものと変化があったと感じます」と語ります。「小麦粉のいいところもあるし、米粉の部分もあって、実は米粉が入っているんだよ、という感じで食べられますね」と感想を話してくれたのは吉野さん。
最後に、熊谷さんが皆さんの評価をまとめました。「共通しているのは、キャベツの甘みを感じやすく、口当たりが少しなめらかなになるということですね」(熊谷さん)。
米粉と小麦を同比率で試食。
生地と具材のバランスが賛否両論。
次の試食は、米粉5:小麦粉5の比率です。箸を上下させながら重量感をチェックしていた新井さんは「全体的に軽くて、1枚ではなく2枚食べられそう」とコメント。
皆さんがフリップをオープンすると、「結構意見が分かれましたね」と永尾さんも驚いた様子。「見た目は変わらないが、食感、バランスが弱くなった気がする。豚バラのカリカリとお好み焼がマッチしているから良いけど、生地だけで言うと弱いかな」と語ったのは八木さん。桑原さんは、「小麦粉と米粉、それぞれの良いところが出ていたかなと思います。その結果、とろっと感が強くなったと思いました。もしかしたら、お好み焼とイメージして食べると違うのかも。また、野菜の味を強く感じ、香ばしさが増えた気がします」と分析しました。
続いて齊官さんは「すごくおいしい!トッピングの味も他の食材の味も際立ち、邪魔しないという米粉の特徴が出ていますね」、長谷川さんは「個人的にひと口目からおいしいと思いました。軽く感じ、重たくない、好みのバランスです」と高評価。 また、「豚バラの食感が違うように感じた。生地のとろとろした食感がそうさせたのかな?」(中村さん)、「豚肉のカリカリ食感は、お好み焼のおいしさで大事なこと。米粉とのコントラストなのか、焼きで出たのか未知数ですね。私は、生地がもたっとしている印象を受けました」(熊谷さん)という意見もありました。
「粉と具材が分かれている感じがするので、バランスという点では悪いと思います。しかし、その分、具材をすごく感じるから、際立つというのはあるのかも」とは木村さん。八木さんも「具材の味を感じやすくなっていると」評価します。前原さんも「米粉を増やしたほうが、生地感が弱くなりますね。万人受けするのは3:7で、5:5になると人の嗜好によるのかも知れません」と分析しました。
最後に総評を熊谷さんが発表。「生地と具材の一体感があり、食材の味を感じました。これはこれでありかなと思います」。さらに「この生地には、シーフード系の具材が合うかも知れないと思いました。味が移るとよりおいしくなりそう」と八木さんが提案してくれました。
食材がより一層際立つ。
お好み焼のニューカマー誕生!?
3つ目の比率である米粉8:小麦粉2のお好み焼が登場すると「見た目が変わった、という声も聞こえてきました」と永尾さん。味わいについても「今まで食べたこのないお好み焼」(熊谷さん)、「全然変わったよね」(八木さん)といったように皆さん、大きく変化を感じている様子。
それぞれに感想をうかがっていくと、「小麦粉の粘りとざらっと感がなくなった。通常のお好み焼と比べたときにはアンバランスですが、それはそれでいい。新しい味わいのお好み焼」(長谷川さん)や「まずは甘みを感じました。生地は薄くなったし、前よりも生地の香りが抑えられ、ソースの香りが感じられる。味も、香りも違うお好み焼ですね。まさにお好み焼のニューカマー」(齊官さん)と、今までにないお好み焼だと感じたという声が。
また、桑原さんの「とろとろっというよりは、粉っぽさを感じます。それぞれの味が引き立つ、でもバラバラと言えばバラバラ、それぞれが主張していますよね」や吉野さんの「素材の良さは出ています。特に卵の黄色い色が鮮やかに出ているのが特徴だと思いました。キャベツなどの他の素材の味が出やすい生地ですね」、中村さんの「ジューシーさもありながらも粉の存在感を感じましたが、何よりソースとマヨネーズの味わいを一番に感じました」といった、食材の味わいや見た目の感じ方の変化についての意見もありました。木村さんは、「より一層、卵、キャベツをすごく感じますね。私のお店では、素材の味を楽しんでもらうことをテーマにしているので、米粉を入れると素材の味が感じられることが分かった。配合してみたら面白いかもと改めて思いました」と米粉の魅力として捉えているよう。
食感への感想が特に多く、八木さんは「口どけは小麦粉100%と比べたときに良くなってきたよね」と語り、熊谷さんも「これまでにないタイプのお好み焼。トロッというよりジュルッというような食感があり、米粉の特性は分かりやすいですよね。新しい新食感」と評します。また、「ソース、マヨネーズもしっかり、キャベツはすごくしっかりと素材の味、甘みが強く感じられますね。いわゆるお好み焼とは別物だと感じます。生地感はトロッとなっていて、口溶けが良く、素材をそのまま食べているような」(前原さん)、「食感がとろとろで崩れるのが早かった印象。それが素材の味わいにつながっているようですね。米粉の良さを感じやすいと思います」(新井さん)。
皆さんのコメントを受けて齊官さんは、「いろんなものを調合したら面白いかも。例えばお味噌を隠し味にするとかはどうでしょうか」と話し、八木さんは「これも海鮮が合いそうですよね。でも生地が緩いので、具材がボロボロ崩れてしまいそう。米粉を入れた唐揚げはサクッとする特性があり、またもちもち食感も米粉の特徴ですが、それはなかったですよね」と疑問を持った様子。
「米粉は面白い食材で、作るものによって食感が変わるんです」と前原さん。それに対し八木さんは「食感のパターン化を分析するのも面白いかも知れないですね」と、研究の余地があることを指摘します。また、木村さんは、「アサリのお好み焼きがあるので、それに合いそうです。こちらのお好み焼より、具材に対して粉が多いのでそこがどう出るか気になっています」と具材と粉の割合についても気になる様子でした。
最後に熊谷さんが「米粉の割合が多いためあっさりしており、それぞれの食材が際立ちました。また、口溶けがよく、今までにない食感に仕上がったお好み焼です」と総評を発表しました。
また、3つの試食が終わった後に、米粉100%で作ったお好み焼2種が登場。ひとつは山芋パウダーの代わりに手に入れやすい長芋のすりおろしを使用し、もうひとつは揚げ玉の代わりに油揚げを使うことでグルテンフリーになったお好み焼です。熊谷さんは「今まで食べた米粉100%のお好み焼の中でもおいしい。この口どけや喉越しを楽しむもので、もっちりは感じない、とろける食感が特徴的ですね。お好み焼らしい味や香りとは別のもの」と話してくれました。
具材や味のベースでお気に入りの比率を見つける。
可能性を感じさせたお好み焼篇。
今日の企画を通し、熊谷さんは「米粉100%のお好み焼は難しいと思われていますが、近年、米粉のクオリティが上がっていて、それが可能になっています。どうお好み焼に合わせて使うか、それによって仕上がりが変わっていくから可能性を感じますね。日本の食文化が注目されている今だからこそ、世界に日本の食文化が発信されるときに粉同士がどんな関係性になっていくか、注目していきたいですね」と語ってくれました。
また、八木さんは「小麦粉だけ、米粉だけというよりは、配合のバランスを見つけていくのが楽しいだろうなと思いました。具材の出汁や味のベースでお気に入りの比率が見つかると良いのかも。可能性を感じますね」とコナモン料理と米粉の融合に期待しているようでした。
改めて米粉の可能性を感じることができた今回。米コ塾では、今後も米粉の魅力や小麦粉との相性、料理ごとの変化などについて研究を続けていきます。また、米コ塾の模様はYouTubeでも配信中。ぜひチェックしてください。